読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

夢は夢のまま

教科書もマニュアルもない人生という学校で、共に学び、支え合い、卒業を目指すためのブログ。

『おおかみこどもの雨と雪』の主人公は誰だろう

先日TVでやっておりました『おおかみこどもの雨と雪』を録画して見ました。

何度かTVでやってる他の細田監督作品が好きで、この『おおかみ~』も過去に録画したこともありますが、そのまんま放置していて今回初めて見ました。


ざっくりと把握していたストーリーは、「母一人子二人で奮闘する」ぐらいなもんでした。
ただタイトルから察するに、子供の方がメインなのだろうと思っておりました。


見終わった感想はというと。



「あれっ、主人公は誰なんだろう…………。」


というのが正直なところです。


監督の描きたかったところが子育てだとしたら、もちろん母親の花が主人公なはずです。

ただ物語はおおかみと人間の血をひく「おおかみこどもがいかに生きていくか」というテーマもあるので、だとしたら子供が主人公なはずです。


何だろう。
表現力不足で上手く言えないのだけど、「おおかみこどもを育てる母親目線」と、「自らがおおかみこどもである子供目線」は両方入れてしまうと「誰が主軸」なのか分からなくなるのではーと思ってしまうのです。


もし母親の花が子育てに奮闘するを主軸にするなら、何も子供が「おおかみこども」でなくても充分成立する気がします。
学生のうちに子供が出来てしまい、夫が早々に死んでしまい、農村で子育てするというだけでもかなり
ドラマチックな展開ですよね。

子供が出来るということは、それだけで人の人生を180度変えてしまうぐらいな訳です。
子育ての大変さは、おおかみであろうとなかろうと変わらんでは~と思うのです。



話を子供の雪と雨に主軸を置くなら、母親の過去の話だけでなく「おおかみおとこ」がどうやって生きてきたかというエピソードが欲しいです。

映画では花は「(彼が)生きている間に聞いておけばよかった」と言っておりますが、花自身は知らなくても、「観客」は知っておくべきだと思います。



「おおかみおとこ」はおおかみでもあり、人間でもあるという存在です。
周りに同じ境遇の人なんて当然一人もおりません。

彼がどういう環境で育ったかは不明ですが、人間の家庭に対する憧れがあるところから見ると、小さい頃から人間社会に身を置いて、周りの子供達と自分の置かれた環境の違いにずっと孤独感を感じてきたのではないでしょうか。


作中では子供達はあまり父親のことを知りたがりませんでしたが、私は子供達が大きくなるにつれて父親である「おおかみおとこ」がどうやって生きてきたか知りたくならないのかなと思います。

だって母親の花はおおかみの血を引いていないので、子供達の体の変化や自身に対する周りの態度とかを理解するのが難しいからです。



私がこの映画で一番好きだったシーンは、姉弟が自分の選ぶ道で対立して取っ組み合いをするところです。
姉弟にとって自分の境遇を理解出来るのは、お互いしかいない訳で、自分の考えに賛同させて「私(僕)の選択が正しい」と思わせたくなるのも分かります。


二人の生き方が違うのは当たり前な話です。
私は「性格を決めるのは生まれか育ちか」というテーマが結構好きですが、きょうだいはホント同じ親でも性格は色々です。

姉の雪が学校に通って、周りの子達を見て、「人間として生きたい」というエピソードは納得出来ます。恐らく彼女の父親もそうだったのかと思うので。

ただ弟の雨がおおかみとして生きる道を選ぶ動機が私には弱く感じました。
元々ひ弱で虫も苦手で、オール電化の家に住むしかないような少年が「本能に目覚めて」、生き方が変わるとは思えんのです。

彼は山奥で「師匠」に何を教わったのでしょうか。
人間として生きる道を全部捨ててまで進む道なのでしょうか。


母親と一緒に見た檻に入れられたおおかみを、雨は「寂しそう」と言ってました。
動物園で生まれ育ち、野生を知らないおおかみの寂しそうな姿は、野生の道を選んだ雨の行く末のような気がしてなりません。


人間として生きるにしても、おおかみとして生きるにしても、ずっと自分の性質と付き合っていくしかないのです。
雨は人間社会に馴染めず、野生の道を選んだのかもしれませんが、野生動物と自分の違いに葛藤する日が来るのではないかと思ってしまいます。



ハーフの方で「顔は外国人なのに英語が話せない」という話をしているのを聞いたことがあります。

どちらかの姿しか認めてもらえないとしたら、人生かなり生きづらいものになります。

全ての人にとは言いません。
自分の人間的要素も、おおかみ的要素も両方持った個人として認めてもらえる環境こそがその人の居場所かなと思います。



私の家は母子家庭でしたので、映画に共感する部分はかなりありましたが、人間とおおかみとの間でアイデンティティーの葛藤みたいなストーリーが主軸だったらドはまりしてたかもしれないですね。