社会人一ヶ月目で仕事を辞めた時のはなし
今日は通勤途中の駅で新社会人とおぼしき人を多く見かけた。
私が働き始めたのは10年ぐらい前の話だ。
苦しかった就職活動を突破して、やっと決めた職場であれば、皆何年か働く心づもりでいるはずだ。
初任給とやらが出れば、親に何か形に残るものとかも贈れるだろう。
今までとはがらりと環境も変わるけど、何とか頑張っていかないと。
そんな思いに反して、私は新卒で働き始めた会社を一ヶ月で辞めた。
初日から無理だと思った。
正確に言うと初日前から無理だと思った。
入社式の前日の3月末日に呼ばれて、何をするのかも事前にあまり知らされておらず、「顔合わせぐらいだろう」と思っていた。
確かに軽い食事会のようなものだったので、終わったら解散になると思っていた。
それが職場に連れていかれ、仕事を命じられた。
帰宅したのは10時頃だったろうか。
入社式も今となっては何をしたのかは覚えていない。
ただ多忙な職場だったので、仕事が怒涛のように押し寄せてきて、ついていくので精一杯だった。
職場で急いでいたらこけて、足をおもいっきり捻挫した。
痛くて床に寝た状態で動けずにいても、同僚は横を通りすぎていくだけで、全く声もかけられなかった。
思わず涙が溢れてきた。
「こんな目にあうなんて私悪いことしたのかな。」
賃金と引き換えに奴隷になったような気がした。
毎日表情も失われ、休みはただ死人のように寝てるだけ。
同期入社の人は私のようにはなっていなかったから、私が社会人失格なのだと思った。
毎日遅くに帰っているのに、毎日のように人身事故で電車が止まって帰りがもっと遅くなる。
もう限界だと思った。
会社に電話して「辞めたい」と言った。
そうしたら、
「まだ入社してたたないのに辞められるわけないでしょ?」
と責められた。
何回も仕事中に呼び出されては、「もう無理です」と告げて辞めることになった。
交通費も定期代は3ヶ月分を立て替えで購入するように言われていて、他支店に出向いた時の支払われていない交通費も支払われなかったため経済的に苦しかった。
それでもあのまま続けてたら、今こうして生きてなかったかもしれない。
辞めた後半年ぐらい転職活動をした。
正直職歴にもならない職歴では相手にしてくれるところは少なかった。
それでも自分が正しいと信じていた「社会人として当たり前」みたいなものは、会社によって色々違う点もあると就職活動をしてみて分かった。
今日駅を歩いていたら、「そんな時代もあったね」と話している人がいて、中島みゆきさんの『時代』が頭を流れていた。
今の日本に満足している人はどのくらいいるのだろう。
人の性質なんて色々だから、もっと多様な生き方があってしかるべきなのに、「規定のコース」を外れたら不利な状況になってますます生きづらくなる人もいる気がする。
別に皆がゴージャスな生活を望んでる訳ではないと思う。
衣食住事足りて、たまに自分にささやかな楽しいご褒美をするような生活でいいと思う。
それなのに、それすらままならない生活をしている人もこの世にはいるだろう。
今の自分の置かれている状況が辛い人も、未来を信じて生きられることを祈っている。